ペリエ!?
昔々、バイトで楽器運びをしていた。
東フィルやシティーフィルが多かった。
いろんなホールや会場に楽器を運ぶ。
一番重かったのはハープだ。
多分、ケースが重いんだと思う。
楽器さえ運べば、後は終演を待つだけだ。
なので、お客のいなさそうな
音の良さそうなところへ忍び込む。
まあ、ベー○ーベンとかモー○アルトには興味がないので
ラベルとかストラビンスキーなど
近代の時は嬉しかった。
ところで「ペリエ」。
確か81年頃フィラデルフィアオーケストラが来日した。
上野文化会館、指揮はオーマンディー。
しかし当時、プログレ以外
何も知らずバイトに行った。
リハの時、チューバの人がでっかいケースから
タバコをいっぱい取り出して僕らにくれた。
その名も「フィラデルフィア」。
そして今度はバーボンを取り出して
みんなでラッパ飲みだ。
管楽器はみんなで酒盛りだったが、
面白かったのはハープのおばちゃん達だ。
向かい合って練習しているのだが、
ハープの音よりお喋りの方が賑やかだった。
また、これもかなり面白いが
チェロの人達は、なんとなく集まってはいるのだが
弾いている曲はみんなバラバラで
お喋りもなしだった。
みんな「カザルス」みたいだったな。
そうこうしてたらスタッフにお使いを頼まれた。
「オーマンディーさんはペリエを所望されている。」
らしい。
ペリエって何???
「炭酸だよ。」と言われ
一平と二人で上野の街を彷徨った。
今ならどこでも手に入るであろうペリエだが
昭和50年代の、それも上野だ。
そんなものなかった。
しょうがないのであさひの炭酸を
2、3本買って帰った。
あの日オーマンディーは
ペリエではなく「あさひの炭酸」を飲んだ事になる。
その後、終演して僕らは舞台の袖で待機していた。
そしたら可愛いおじいさんがこっちをみながら
ニコニコして歩いて行った。
ランニングに手拭い姿の青年達がそこにいた。
横にいた一平が硬直している。
「オ、オーマンディーだ!」
僕は思わず聞いてしまった。
「有名か?」
チャンチャン。