PIANO弾きへの道 vol.3
隣の教室から
カッコいいピアノが聞こえてきた。
壁に耳を押し当てて
ずっ〜と聞き入ってた。
そのピアノの弾き手が
辛島さん、辛島文雄さんだった。
一年経って
やっと辛島さんのレッスンに
変えてもらったその日
エレベータの前で緊張して待っていた。
扉が開き辛島さんが出てきて一言
「なんだお前は?!」
怖い人なのだ。
それでなんか弾いてみろと言われ
独学でやってきた「枯葉」を弾いた。
そしたらまた一言
「なんだそれは!!」
と言うことで
コテンパンに潰された。
1からやり直しになった。
しかし、その日から
辛島さんの弟子になったのだった。
自分のレッスンは週に1回なのだが
辛島さんは2回来ていたので
僕も2回勝手に通った。
もちろん1日はただの見学だ。
4時から10時のレッスン時間なのだが
3時半には行って最後までいた。
今考えるとウザい奴なのだが
人のレッスンも聞きたいのだ。
自分のレッスンは
下手をすると5分で終わっていた。
なので人のレッスンも聞いて
解らなくても録音して
必死に食らいついていた。
そのうち辛島さんの
使いパシリになったのだが
それでもよかった。
よくマルボロや缶ビールを
買いに行かされた。
ちなみにお釣りは
しっかり徴収された。
レッスンとともに
PIT-INNへもよく行った。
辛島さんがジョージ大塚さんの
バンドだったから聞きに行ったのだ。
ジョージさんも辛島さん以上に怖い人だった。
本番中にBASSの人にスティックを投げて
よけると「よけるな!!」とか怒鳴ってた。
かなり過激な現場を目の当たりにした。
また目の前でクビになるBASSの人も
何度も見た。
「お前なんか帰れ!帰れ!」
そしてその後、辛島さんが
左手でシンセでBASSをやるのだが
下を向いてトボトボ帰るBASS弾きに向かって
「お前よりこっちの方がいい!!」
とか、強烈な言葉を投げつけていた。
19歳のShing118少年は
こわぁ〜いJAZZの世界を
垣間見たのであった。
つづく