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キビシイ現場


過酷な演奏現場の話。


ピアノ弾きは

自分の楽器を持って行けない。

もちろんエレピなら持って行けるが、

生のピアノの代わりにはならない。

というか゛別物゛だと割り切って

弾かないと、腹が立ってくる。


下高井戸の某LiveHouseのピアノ。

弾いた鍵盤が元に戻らず、

いちいち直しながら弾くしかない。

そんな現場で2~3時間ピアノと格闘した。

終わったら店主が来て

「20年ぶりに音を聞いた。」だって。

酷いピアノを弾かされたものだ。


お次は某AシアでのXマスの仕事。


あれだけ調律頼んでおいたのに

弾いてみたらドレミすらわからないほど

狂いまくっていた。

ちゃんと管理してないから、

誰かにめちゃくちゃに

叩かれたのだろう。

しょうがないので

そのままやったけど、

どんなに頑張っても無理。( ; ; )


過酷と言えば横浜時代。

高級クラブでの箱バンの仕事。

お客は、ほとんどがスキンヘッド。

坊さんとヤーさまばかり。

座って3万円の高級店。

その頃、横浜にもEイズの波が来た。

ヤーさまにも2人うつった奴が‥。

1人は横浜じゅうのホステスに

うつしてやるとほざいていた。

そして問題なのがもう1人。

朝、自分の血を注射器に2本とって

両手をコートのポケットに忍ばせて

気に入らない奴に刺すのである。

演奏中、ベースのまっちゃんが

「中村君、Eイズ来た!」

と小声で囁く。

見ると目の前に座っている。

これは怖いよ。

いつ刺されるかビクビクしながら

弾いてた。


あっ、また思い出した。

伊勢崎町の深夜の店での事。

入店するなり

サブちゃんの「函館の女」の

演奏を要求し、

帰るまで延々と弾かせる

切り込み隊長のヤーさま。

1~2時間「函館の女」ばっかり。

怖いから、他のお客も我慢してた。

切り込み隊長なので、

ある日の討ち入りで永眠。


あっ、また思い出した。

こっちは飛騨での話。

物騒な話ではないが、

強烈にさぶい現場の話。

「結氷祭り」とか言うやつ。


一応、お堂みたいな所での

トリオの演奏だったが、

いくらストーブがあっても

扉を開けた途端゛マイナス13度゛だ。

指は瞬時に悴んで

ピアノどころではなくなった。

おまけに電圧が弱すぎて

アナログ楽器はお手上げになった。

昔、ブラスの人達も演奏したらしいが、

マウスピースに唇がくっ付いちゃったらしい。


指や唇を使う演奏には

マイナス13度は無理なのである。


気持ちのいい演奏は

気持ちのいい現場じゃなくっちゃね。


ちゃんちゃん。











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